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福島家庭裁判所相馬支部 昭和40年(少)98号 決定 1965年8月21日

少年 Y・K(昭二三・一二・二四生)

主文

少年を福島保護観察所の保護観察に付する。福島保護観察所長は環境調整に関し特に次の措置を行うこと、(イ)父親の禁酒、(ロ)家庭内の円満

理由

一、非行事実

少年は、昭和三九年四月○○日午後五時四〇分頃、○藤○○子(当一三歳)を姦淫しようと決意し、原町市○○字○○××番地々内山道で同女を取りおさえ、約一〇米位無理に引きずり、手で口をふさぐ等の暴行を加えその反抗を抑圧し、強いて姦淫しようとしたが同女の強い抵抗のためその目的を遂げなかつたものである。

二、適条

刑法第一七七条、第一七九条

三、主文掲記の保護処分に付する事由

少年の資質、生活歴、家庭環境等は、少年調査票、鑑別結果通知書記載のとおりであるが、特に問題となるのは、

(一)  少年の知能は限界級(IQ-68新田中B1式)で情緒の安定性がやや乏しい抑うつ的気分が支配的であり、自己の殼にとじこもりがちである。因て思考、判断は自己中心的になりがちで独断的な反面、自己不確実性、劣等感が強くみられ、被影響性が大であり、衝動的な行動に出易い性格である。

(二)  その家庭は山間辺地の一軒家で地域社会から孤立して電燈がなく、きりつめてやつと生活を続けている。それなのに少年の父の日常生活態度は自己中心的で、家族を省みないところがあり、つまり、父は農業兼日雇をしておるが大酒飲みで、しかも深酒をすると酒乱となつて屡々妻子に殴る蹴る等の乱暴をなし、これが一家の悩みの種となつている。

また、母は温和であるが指導力がない上、産後腰を痛め歩行に支障をきたし重労働ができない身体障害者でもある。

本件は前記の如き性格的傾向に基因し、遠くは家庭環境の劣悪、ことに父の放従な生活態度に対する少年の強い不満、緊張を持続したこと等による逃避から惹起せられたものと認められその罪質はまことに重大であるけれども、その実行段階に至らず未遂に終つている。このことは、この種犯行の実行を推進する大胆さとは程遠く、少年の小心さの一端を示すもので、少年が当審判廷で誓つているように二度とかような犯行はないものと認められる。

また父は、この事件を契機とし、自己の日頃の生活態度を詫び、当裁判所に対しても今後禁酒を実行し、夫婦ともに円満な家庭を再建し、少年を善導してゆきたいと述べている。かような次第で、この少年に特有なる前記の如き諸問題は将来克服せられる見込があるので、この際適当なる専門家による在宅保護処分に付しその更生を図るのが相当であると認める。

なお福島保護観察所長は保護観察を実施にあたつては本件の特異性に着目し、少年の前記の如き性格偏奇に対し充分留意をなすと共に少年の家庭環境調整につき特に父の酒に対し(イ)禁酒と(ロ)家庭内の円満を図るような措置を講ぜらる必要があると思料する。因て、少年法第二四条第一項第一号、第二項を適用し主文の通り決定する。

(裁判官 藤巻昇)

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